あやか

小児の訪問看護特有の難しさってありますか?

斉藤さん

まずは制度面ですね。

斉藤さん

お年寄りの場合は介護保険や医療保険など制度がしっかりできているので、収入もあるし契約という形で訪問看護が入りやすいんですよね。
その点小児の症例は比較的少ないので制度が整備されていないように思います。
ですから訪問看護ステーションにとっては、成人の利用者が一定数いれば小児をそのついでに対応できるという感じなんですよ。

えり

全ての訪問看護ステーションが小児に対応できるわけではないんですね。

斉藤さん

病院側の小児の訪問看護に対する理解も十分とは言えないかもしれません。

斉藤さん

「医療的ケアがあってもお母さんができるからいいよね」とか、「訪問看護にわざわざ入ってもらって何してもらうの?」とか言われることが多かったですね。「何か問題があったら病院に帰って来ればいいよ」というスタンスが主流でした。

えり

「こういう場合は訪問看護」というのが定まっていなかったんですね。

斉藤さん

そうなんです。そういう状況で私たちが受け持つとなると、家族が在宅で育児を諦めてしまうんじゃないかとか、医療的ケアがあまりにも大変で生活が成り立たなくなるんじゃないかとか、お子様の状態が悪化した時にお母さんが対応できないんじゃないかとか、難しいケースが多かったです。

あやか

なるほど。そういった状況でどのようなことを心掛けられていたのでしょうか?

斉藤さん

どんな保護者なのか、そのお子さんがどう育っていったらいいのか、その家にしかない条件がそれぞれあります。医療的ケアを受けるとかじゃなくて、子どもが良い環境で育つことを支援することがすごく大切だと思っています。

あやか

医療的な部分だけが重要というわけではないんですね。

斉藤さん

そうなんです。
「医療的ケアがないから訪問看護はいらないよね」とか言われがちなんですけど、もしお母さんがその子を見るだけで悲しくなって動けなくなるとしたら、ちょっと誰かが支えてあげるとか、その子がある程度元気になるまで一緒に寄り添ってあげる必要があります。
そうしているとお子さんはびっくりするほど元気になることもあるんですよ。

あやか

精神的な支援も重要なんですね。

斉藤さん

お子さん自体は話すことはできないとしても、お母さんの環境や感情やオーラのようなものを体ですごく感じているんだなと、何年も同じ家庭に通っているとすごく感じます。

斉藤さん

頑張りすぎるお母さんもいて。「お母さん最近疲れてない?」って私たちが言うと。お母さんは自分の疲れに気づいていなくてびっくりされることもあるんですよ。そういう状況だとお子さんも具合悪くなったりすることがあるんですよね。

えり

そんなこともあるんですか。

斉藤さん

それでほんとにお子さんが体調を崩して入院したりすると、お母さんが「やだ入院になっちゃった・・・。ごめんなさい」とか言ったりして。
私たちは「いや、お子さんが与えてくれたおやすみの時間だから、お母さんはしっかり休みましょうね」とか言うこともありました。
レスパイト入院もない時代でしたし。

えり

レスパイト入院というのは?

斉藤さん

医療管理を受けながら在宅で療養されている患者さんを入院治療の必要がない場合でも,病院で短期間お引受けする入院の事です。 今は制度として確立しています。
相談支援員も必要だよね。という感じでいろんな制度が出来上がってきました。