あやか

小児の訪問看護に携わる人は今でも少ないんでしょうか?

斉藤さん

嬉しいことに小児訪問看護の希望者は少しずつ増えてきています。
ただ小児看護の経験があまりない方にとっては、実際どうしたらいいんだろうという不安もあるようです。指導してくれる訪問看護ステーションも多くはありませんし。

えり

そうですか。

斉藤さん

ですので、私たちの経験が少しでも役に立てば、ということで月1回勉強会をやっています。
「松本圏域障害者在宅看護支援研究会」をいうのをZoomで行っています。事例検討やリハビリなどのテーマを掲げて勉強会をしています。出会える症例は限られているので、みんなで経験をシェアしようとしています。

えり

横のつながりが大切なんですね。

斉藤さん

例えば前回は訪問リハビリがテーマでした。
小児のリハビリはみなさん経験あまりがないんですよ。

あやか

確かにあまりイメージがわかないです。

斉藤さん

これが実はとても大切でして・・・。
例えば側弯症です。悪くなったら手術になるんですが、どうやって悪くしないかということがとても大切です。

あやか

予防できる部分もあるんですね。

斉藤さん

赤ちゃんの頃から体を動かしていくと側弯になりにくいというのはあります。
ですので、マッサージやストレッチなど家でできることを指導して続けていくことが大切です。

えり

赤ちゃんのうちからですか。

斉藤さん

予防は大切です。側弯予防は小児リハビリの大きなテーマの一つです。
小児のリハビリに詳しい方は多くはないと思うので、経験を持ち寄る必要があります。

えり

相談できる人がいるのは心強いでしょうね。

斉藤さん

ご家族との人間関係でつまづいたりするとめげてしまうかもしれませんしね。
やる気のある人を支えてあげられればいいと思っています。

あやか

他に訪問看護について課題はありますか?

斉藤さん

経営面は問題ですね。1件に時間かかかりますし、移動にも時間がかかってしまいます。訪問看護って移動時間が計算に入っていないんですよ。

あやか

ものすごく症例が多いわけでもないでしょうから、1件1件が遠くなってしまいますよね。

斉藤さん

ですので成人も一緒にしないと成り立たない部分はありますね。
そうしたことも経験を積みづらい一因にはなっていると思います。

えり

小児科の先生に知っておいて欲しいことはありますか?

斉藤さん

こどもの病気を治して家に帰すだけではなくて、お子さんが家に帰った後どう育っていくんだろうというところに注目してもらえると嬉しいですね。

えり

なるほど。

斉藤さん

お子さんの在宅支援について、療育などいろんなところと関係を持って、ご両親が自信を持って育てていける環境を作る。小児科の先生にはそういう役割も期待しています。

あやか

実際に困っていることはどんなことがありますか?

斉藤さん

私たちは医師から指示書をもらって仕事がはじまります。
ただ、その指示書はあまり具体的でないことが多くて・・。
「呼吸管理」「呼吸リハビリ」「栄養管理」と一言ずつ書いてあるだけだったり、項目にマルがついているだけだったりすることが多いですね。

あやか

それだと支援のイメージを持ちづらそうですね。

斉藤さん

例えば「嚥下のリハビリ」って一言書いてあったとしても、それだけでわかる看護師は少ないですよ。ST(言語療法士)さんにつながっていればまだわかるんですけど、それもないと、お母さんに「どういうものを食べさせていますか?」「食べる前にどんなことをしていますか?」「口の周りの運動をどういうふうに考えていますか?」とかいうところから紐解いていく必要があります。

あやか

なるほど。

斉藤さん

実際にご両親ができることでないと負荷が強すぎて毎日続けられませんしね。そうするとご家族も経口摂取を諦めてしまったりして・・。
それで小児科外来に行くと「この子食べられないです」「そうかダメだなあ」ってなって「経管栄養に戻そう」という風になると発達に影響も出てしまう可能性があります。

あやか

きめ細かい評価が大切なんですね。

斉藤さん

その通りです。今この子はどんなことがチャレンジできて、何が問題なのかというところまでしっかり評価していくことが大切になります。

斉藤さん

病院のやり方と在宅でのやり方はやっぱり違いますよね。医療的ケアを行うことがご両親の主な役割ではないですし。在宅ではどういう風にやればご家族の負担が少なく、その子を受け入れることができて、他の家族もちゃんと生活ができるというところを目標にしていただきたいなと思います。