注意すべき合併症
- 気管腕頭動脈瘻
- 窒息
- 胃婁の誤挿入
- バンパー埋没症候群
気管腕頭動脈瘻
概要
気管切開術に伴う重篤な合併症。気管カニューレやカフが気管壁に慢性的に接触することで気管壁に潰瘍を生じ、気管と近接する腕頭動脈との 間に瘻孔ができ出血する。気管内出血は致命的である。
気管切開術後 3 週間以内が発症しやすいやすいが、その後の慢性期でも起こりうる。
症状:
気道出血(カニューレや気管切開部からの拍動性出血)、ショック
検査・予防・治療:
予防が最も重要であり、そのためには定期的な内視鏡での観察が望ましい。気管前壁の拍動する肉芽は注意すべき所見である。
出血時の治療は、①カフ付き挿管チューブで圧迫止血(オーバーインフレート)②緊急手術(腕頭動脈離断術)
窒息
概要
:
神経筋疾患などで排痰困難や嚥下困難な場合に合併する。気管切開後の患者においては、粘調度の高い痰などでカニューレが閉塞することもある。
症状
:
チアノーゼ、ショック
検査・予防・治療:
吸引、カフアシストなど行い予防に努める。 気管管切開後では固い痰がこびりついて吸引しても改善しないことがあるため、その場合はカニューレを交換する。気管孔が狭小化して再挿入が困難になることがあるため、ワンサイズ小さいカニューレもあらかじめ用意しておく。
喉頭気管分離後では、カニューレの事故抜去は抜けかかった状態でも、窒息することがあり注意が必要。夜間はSpO2モニタをつけておく事が望ましい。
胃婁の誤挿入
概要:
胃婁カテーテルが胃内に正しく挿入されていない状況。この状況で栄養が誤注入されると、腹膜炎から重篤化する可能性がある。
症状:
腹痛、発熱、嘔吐など
検査・予防・治療:
チューブが胃内に入ったかどうかの確認を行う
・胃内容液がかえってくるかどうか
・レントゲン、超音波検査
・内視鏡でチューブを通して胃内を確認
・色素法(ピオクタニン、メチレンブルーなど)
バンパー埋没症候群
概要:
内部ストッパー(バンパー)と胃粘膜が長時間強く接触する事により、胃瘻カテーテルの内部ストッパーが胃壁瘻孔内に迷入・埋没する事で起きる一連の問題。
原因としては、内外ストッパーの締め付けが強すぎる、ガーゼの固定が強すぎる、シャフト長が短い、長時間のカテーテルの牽引などがあげられる。
症状
:
カテーテルの動きに抵抗がある(滑らかに回らない、上下に動かない)
検査・予防・治療
:
液漏れ対策としてきつく締めつける事を避ける。毎日1回以上くるくる回転させ、上下に1~1.5cm動くこと確認する。
制度
はじめに
対象者
内容
申請方法
補足
人工呼吸管理
はじめに
人工呼吸器とは、一定の圧をかけて肺を広げ呼吸をサポートする機械のことです。
適応
種類
- NPPV(Non-invasive Positive Pressure Ventilation 非侵襲的人工呼吸機)
- IPPV(Invasive Positive Pressure Ventilation 侵襲的陽圧換気)
IPPVは気管切開や気管チューブを使用した人工呼吸管理、NPPVは気管切開をする事なく人工呼吸管理を行う方法です。
手技
①設置場所と電源位置を確認する。本体と壁の間には隙間を作る必要があります。人工呼吸器の近くには吸引機と、SpO2モニタを置けるようにしましょう。他の家電製品とは別の電源にしましょう。
②加温加湿器を設置する。
③回路内の結露を確認する。水滴が気管に入ると苦しくなるため、回路内の水滴がウォータートラップに溜まるようにチューブ位置を設置する。
④観察項目をチェックする。
・全身状態
・カニューレの固定状態
・呼吸器の作動状況
日々の観察
- 全身状態:バイタルサイン、チアノーゼ、呼吸音
- カニューレの状態:固定状況、カフ圧、予備はあるか
- 作動状況:電源、加温加湿、回路のねじれや折れ、アラーム
- 緊急時の物品の確認
- バッグバルブマスク、吸引物品、気管カニューレの予備、固定物品
補足、Q&A、コラム
・緊急時の対応は?
DOPEで評価する。EDOPの順番で評価していく。
Equipment failure(器具の不具合):用手換気に切り替えて人工呼吸器の問題を排除
Displacement(チューブ位置異常):挿管チューブの固定状況や挿入長さを確認
Obstruction(チューブ閉塞):痰などによるチューブの閉塞の有無
Pneumothorax(気胸):患者背景も考慮し身体所見から気胸の有無を評価
・胃残はどのように評価すればいいのか?
無色透明:胃液であり、そのまま胃に戻します。
栄養剤が少量:消化はおおむね良いです。戻して予定量を注入します。
栄養剤が多量:消化は不良かもしれません。差し引いて注入するか濃度を薄くします。
空気:普段から空気を多量に飲んでいます。嘔吐の原因になるため、そのまま排出します。
茶色:古い出血の可能性があります。吸引物は捨てて、持続する場合には病院に相談しましょう。
赤色:消化管から出血している可能性があります。吸引物は戻さず、増強の有無を確認して病院に相談しましょう。
・チューブ交換の目安は?
週に一回交換する事が基本ですが、施設によって異なるため病院に確認しましょう。長期間留置すると硬くなって抜去しにくくなる事があります。
・注入中に嘔吐してしまったら?
まずは注入を中止しましょう。誤嚥しないように顔を横に向けます。顔色や呼吸状態をみて問題なければ注入を再開します。注入時には、注入速度が適切か確認して、頭を高くしたりして体位を整えてみましょう。
・注入中にチューブが抜けてしまったら?
誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があるため、注入を止めてチューブを抜去したままにしましょう。注入は呼吸状態や嘔吐がないかを観察し十分落ち着くまで待ちましょう。
・胃婁周囲の肉芽はどのように対応すればいいのか?
痛みや出血がない場合は経過観察で問題ありません。肉芽が大きくなり、出血、痛みがある場合は病院に相談しましょう。清潔に保つ、胃婁ボタンやチューブを皮膚と直角に保つ、ボタンを回してみる、接続チューブをつけたままにしない、などしてみましょう。